THE ESSENCE OF FLY TYING



第一話 D・F・O (ドライフライオンリー)

自分で作ったフライに魚が飛びついてくる楽しさ!これを味わったら、もうフライの世界から抜け出る事は出来ません。
色々作って、フライパターンが膨大になったり、整理して自分が使い易いパターンだけに絞ったり。
「使い易い」と言っても、「魚を釣り易い」「見易い」「乾き易い」「作り易い」と、様々な「・・・易さ」がありますね。
マテリアル等にも同様の「・・・易さ」があって、組み合わせるとこれまた膨大な量です。
「壊れ難い」「沈み難い」など「・・・難い」という基準もよく使う言葉なので、
もう、こうなるとタイヤー個人個人が、パターン一つ一つに「小宇宙を求める」という事になってしまいます。
えーと、あとは川の流速と、ドラッグと、水温と、ハッチ状態と・・・。
まったくもって限りが有りません。ドライフライに限ってもコレだけの要素があるのですが、
ラインシステムやロッドの性格、ご本人の反射神経?
これだけの要素が重なって「サカナの口にフッキングする」ことは奇跡に近いものなのかもしれません。
フライタイイングは、そんな釣り人の「願望の塊」であり、そして「唯一サカナと人間」の接点です。

「釣れなかった日の夜には良いフライが巻ける・・」チョット怖い・・。
フライフィッシングは「考えて」「試して」「結果を観察する」という行為の繰り返しです。
このコーナーでは、まったく個人的な見解として「ちょっと便利かも?」「この組み合わせはグッド!」などの、
タイイングのエッセンスやティップスを思いついた時に紹介していきたいと思います。


第二話 何で?ドライフライが好きなんでしょう? 

あらゆるフライフィッシングスタイルの中で、ドライの釣りが好きでたまりません。
1年の90%以上はドライフライを使って釣り始めます。(ほとんど、最後まで・・)
フライボックスの中身も比例しています。ライズを見ると、俄然!ヤル気が出ます。
決して、他の釣り方を否定したり、卑下したりする訳ではありませんョ。
そんなに下品には育てられていませんので・・・。

何故なのでしょう?
「サカナが見えて刺激的!」「決着が早い」「水中の事が解からない」そんな所が理由でしょうか。
これらをまとめて言うと、ワタクシ的に「ラクチンな釣り」だからです。
「ちゃんと浮かせて」「ちゃんと流せば」、勝手に喰い付いてくれるからラクなんです。
ウェット、ニンフ、ストリーマーの釣り方も同じフライの釣りなんですが、
それぞれ「努力するポイント」や「重要なポイント」が違うんでしょうね。
距離を稼ぐとか、ボトムを探るとか、タテの動きを演出するとか、になるのでしょうか。
どれも極めれば楽しいんでしょうけど、なんだか「バンブーロッドでドライの釣り」をしていると、
一匹釣れたら、後はもう、どうでも良くなっちゃうんですよね。
沢山釣るより、ライズフォ−ムやフッキング位置の方が、よっぽど気になります。


第三話 人間も恐いけど、鳥はもっと恐い

「木化け、石化け」「ストーキング」「先行者が居ないポイントに入ろう」
サカナに気付かれないように注意深く行動する事は重要ですよね。
しかし! 人間を舐めきっていて、悠々と定位するサカナも居ます。
ある日、何回フライを流しても、逃げも隠れもしないヤツに出くわしました。
あきらめて、そのサカナの動きを見ていた時、カラスが横切り、その影が水面に映りました。
あの憎たらしいサカナは水飛沫を上げて、逃げ廻り、二度とすがたを見せませんでした。

食べ物は見定めるけど、食べられたくはないというのもサカナの本能なんでしょうね。
へたくそな釣り人など、さほど警戒レベルが高くないのかもしれませんね。
あっ!それから、
ウェダーを履いているからといって、いきなり川に入る人は居ないですよね?
第一投は、水辺からかなり遠い河原から始めていますよね?「木化け、石化け」ですよ。


第四話  ライズフォームとフッキングポイント 

   ここいらへんで、チョット真面目な考察を・・・。
ワタクシの本拠地であるポンド「ジュネス」は一年中ドライの釣りが楽しめます。
平地に位置し、安定した水温の南アルプスの伏流水(地下水)が豊富であるとういう特殊事情があり、
サカナのコンディションも良く、一般河川より2ヶ月ほど早いハッチローテーションです。
フライのテストには打って付けで、ライズフォ−ムの研究にもなります。
色々な名を付けて「OOライズ」と紹介されていますが、大きく分けると2種類だけだと思います。

それは、「体を大きく水面に出すライズ」と「吸い込むライズ」です。
「体を大きく水面に出すライズ」はダンを代表とする、水面に立つ"アダルト"と認識し、
栄養豊富な成虫を"飛び立つ前に食べちゃおう!"という心理です。
反転する事を前提にライズをしているので、フッキングポイントは口の横が多いですね。
活性が高く、エキサイティングで達成感の有るライズです。(ヤッター!って感じ?)
「吸い込むライズ」は"何か小さい物""動かない物""ピューパ等"と認識していて、
"安心して良さそうだから、ノンビリ食べよう"という心理がうかがえます。
ゆっくりと浮上してきて、口を開けるのが見えるほどスローモーションの様に見える!(これも好きだなー!)
フッキングポイントは、舌べらとエラの内側が多い。(水と一緒に飲み込んでますからね)

では?両方とも可能のするフライパターンって何でしょう?それは・・、「シャック付きのダン」です。
言い換えると「水中に捕らわれて、モタモタしている栄養豊富な大きなエサ」なんです。
本当なんですよ?サカナに聞いてみて下さいね。


第五話 学習能力

よく、「サカナは1投目に出るから、慎重に!」とか、
「フライを覚えちゃったから、ローテーションしなくちゃ」とか言いますよね。
たしかに、私もサカナの学習能力は高いと思っています。
しかし、「高度な学習」でもなければ、「緻密な学習」ではありません。
当然、虫の名前は知らないし、足の本数を正確に数えたりしません。
いたってシンプルな「本能に基づいたゼロ・ワン思考」だと思います。
「危険回避」と「食欲」という2つの生存欲の間で、判断と行動を決定しているのです。

最初のト書きを言い換えると、
「よほど危険な物と認識していなければ、サカナは常に流下物に興味を持っている」
「以前、食べた様な気がする、危険度の低いと思う物は、とりあえずかじってみる」
「食べ物じゃなければ、無駄な行動はしたくない」と、なります。
リアルなフライでなくても、サカナは取り合えず興味を持ってくれます。「食べたい!」と思わせるのは、
フライパターンよりも、「ソフトなプレゼンテーション」と「自然な流し方」のほうが大事かな?ヤッパリ・・。


第六話 弱い者イジメ

"サカナは遊びません"徹底したコスト意識を持っています。
「フィ−ディングレーンに定位する」って言うじゃないですか。
流れが集まってエサの密度が濃くなるから、ちょっと首を振るだけで口に運べます。
"サカナは危険を嫌います"生存こそが彼らの目的だからです。
歳を重ねた賢いサカナは一等地に陣取り、危険な水面には目もくれず、ニンフや小魚を主食にしています。
(クソ−!だから大きな魚はドライに出ないのかー!)
水面の成虫を狙うにしても、"最小の運動で、危険を最小限に抑える"原則は変えません。
「チェッ!せっかく泳いだのに、飛んで行っちゃったよ」などという事は、彼らの美学に反する事なんでしょうね。
喰い損ねた時に何度も出るってのは、よほど悔しかったに違いありません。

"サカナが食べたくなるドライフライ"の条件は、捕食できる確率の高い状態の物です。
それは?「トラップド」「クリップル」「ドロウンド」「イマージング」などと呼ばれる
表面張力に捕らわれ、簡単には逃げて行けない状態の個体です。
そして、強烈な"偏食スイッチ"が入っていなければ、"栄養豊富な大きな個体"から捕食します。
つまり!「あっ!あそこでモタモタしている軟らかそうなの、大きくて美味しそうだなー」
これが彼らの美学です。


第七話 フックポイントが有るのがフライ

数え切れないほど生み出されたフライパターンにも、共通する特徴が一つだけあります。
必ず「フックポイント」が有るということです。そしてそれは、本物の昆虫と決定的な違いです。
「醜い金属の塊り」をサカナが嫌がるか否か?とても興味深い論議ですが、
「そんなに気にしていないんじゃないの?」というのが私の結論です。

フライの世界では"タブー視"ですが、アナタは「赤バリ=タイイングせず鉤だけ」で釣れる事をどう解釈しますか?
鉤そのものを「細くてクネクネしている、食べられそうな物」と思っているとしか考えられません。
「極力、フックを隠すようにタイイングする」方も居れば、
ワタクシのフックの様に「フック丸出し!」で"シャック"や"ピューパ"の様に見せる方法も有る訳です。
「大前提」として、ゲイブやポイントが必ず存在する「フライタイイング」なら、
その存在を「肯定するか?」「否定するか?」意識をもってタイイングすべきじゃないでしょうか。
フック込みでタイイングを考えると、チョット違う世界が見えてくるはずですよ。


第八話  プールで泳いでいた魚達の遺伝子

今や管理釣り場は勿論のこと、一般河川でも養殖魚を否定することは出来ません。
淘汰されずに何百匹単位の「兄弟」が生まれ、四角いコンクリート製のプールで育ちます。
水生昆虫のハッチは無く、主食は「丸くて黒いペレット」ですから、昆虫の「学習」は出来ません。
時折、外部から舞い降りる昆虫も珍しく映ることでしょう。当然、小魚(ルアー)など見たことありません。
さらに、基本的に人間に対し恐怖心を持っていないと思われます。
むしろエサをくれて、外敵(鳥など)から守ってくれる「イイ人!」と思っているかもしれませんね。
 生存競争から開放され、人生を謳歌していることでしょう(本当か?)

そんなサカナ達が「違う環境」に移された時、どんな行動をするのでしょうか?
@ 彼らは壁を恋しがります。プールの壁に似ている岸寄りを好んで泳ぎますね。
A 人を恐がりません。当然ですね。毎日見ていた「イイ人!」なわけですから・・・。
B 水面に落ちる物に異常に興味を示します。エサはハッチせず、上から撒かれていたので・・。
C クルージングをします。と言うか、みんなと一緒に泳いでいるだけなのでしょう。

まあ、だんだん慣れてきて、個々の行動をとり始めるんですが、
「ライズやヒットが本当に捕食行動なのか?」疑問に感じる衝撃の"事実"をお伝えしなければなりません。
内容物を見る為に胃を割くと、中身は「5mm大の石ころ」です?他には若干のミッジだけでした。
何故?「プールの底に落ちたペレットの拾い喰い」の真似をしているのです!!本当にショックでした・・。
まあ、そうも言ってらないので・・・、フライのテストもしなければならないですから、
ポンドで釣りをしていると、やっぱりフライの形状や姿勢で「出方」に差があります。

「細くて長いシルエット」や、「ハックルのライトパターン」の誘惑に弱いのは、
「学習」以前の「遺伝子」の教えなのかもしれません。
ただし、慣れていないので、「食べるのヘタ!」です。一発で仕留めるのは、まだムリみたい?


第九話 フォーム材は食べにくい?

サカナの物の食べ方は「水と一緒に吸い込む」だけです。
ビデオなんかでブラックバスの捕食を見ると、物凄い量の水と一緒に吸い込みますよね。
小魚なども「かじる」のではなく、やっぱり「一緒に吸い込む」のが捕食の方法だと思います。
よく、ツツク場面も見られますが、あれはすでに口を閉じていて、捕食に意思は無いと思います。
ドライフライは「良く浮いてほしい」のですが、それを優先してばかりいると、「吸い込めない」状況も起こります。
この頃、人気のある"フォーム材"ですが、「カラーが豊富」「水を吸い込まない浮力」と「ソフトな感触」で、
テレストリアル中心に使用の多いマテリアルです。(けっこう好きです!)
ボリュームのあるボディを作るのにうってつけなのですが、
「あれ?出るのにフッキングしないなー?」と思った事はありませんか?
柔かい素材だから、弾かれている筈は無いし?嫌っている様な出かたじゃ無いし?ナゾじゃありませんでした?
それって、「浮力がありすぎて、サカナが吸おうとしても吸いきれない」現象なんですよ。

もともとテレストリアルの浮き方は70%以上が水中で、水面に出ているのは、ほんの一部です。
「視認性を優先」したいのはやまやまですが、ここは我慢して「食べ易さ」を考慮してあげましょう。
対策としては、重し代わりに"ヘビーワイヤーのフック"を使ったり、
"ワイドゲイプ+ショートシャンク"で、1サイズか2サイズ大きなフックに小さくタイイングする事をお薦めします。
カラフルなフォ−ム材を使ったテレストリアルフライは、”夏の釣り”にピッタリ!ですもんね。


第十話  雑食

   サカナは何を食べているのでしょう?
「フライフィッシングなんだから、水生昆虫か小魚にしなさい!」と言われそうですが、
サカナの方は、そうでもなさそうです。
以前、「菜の花フライ」のお話をしたのですが、生きる事に必死なサカナ達は、決して"肉食オンリー"ではありません。
体を大きくする事は"安全"につながるので、フィッシュイーターに"偏食"することはあっても、
"食わず嫌い"になる事はありません。
以前、「植物性タンパクの分解酵素を持っていないから、植物を食べたら死んじゃうんだよ」と聞いた事がありますが、
「まてよ?ペレットって、つなぎにデンプンを使っているはずだよなー」実際、菜の花や綿毛を争うように食べているし・・・。
マッチ・ザ・ハッチは楽しいけれど、サカナを騙すだけなら、もっと範囲を広げて、
”マッチ・ザ・フーズ理論”も楽しいかも・・?


戻る