THE ESSENCE OF FLY TYING



第十一話 タイイングスピリッツ

そろそろタイイングの話でも・・・。
フライフィッシングの楽しみ方は、
大まかに言って「フィッシング」「タイイング」「キャスティング」の3つだということは、
大勢の方が納得して頂けると思います。
「自分で作ったフライで、ロッドとラインを操って、魚をかける!」これぞ!フライマン!
特にタイイングは釣りの出来ないシーズンでも、机があれば遊べるフライの楽しみ方です。
前シーズンの釣りを思い出し、次のシーズンに想いをはせる。(イイ趣味ですねー!)
雑誌の載っているパターンのコピーをしても、オリジナルを開発しても良いのですが、
そこに"自分らしさ"を注入してみませんか?

"タイイングスピリット"などと大袈裟に言ってしまいましたが、何のことはありません、
「自分の都合」「私はこう考える」「こんなの作りたい!」という精神の事です。
私のお薦めは「設計図」を描く事です。今から自分が作る物を絵にすることは、
"バランス"や"マテリアルの選択""各パーツのカラー選定"にとても役立ちます。
虫そのものを描いても良し。フライパターンを絵にするのも良いでしょう。
「フライはアートだ!」とは言いませんが、フライ作りに"絵心"は大変重要な要素です。


第十二話 ラインクリーニング

一見、フライタイイングと無関係に思われるでしょうが、
せっかく作った「アナタのフライ」の性能を引き出す大事なことなんです。
サカナのアタックからフッキングにつながる重要な要素なので、聞いて下さい。
ドライの釣りなら当然フローティングラインを使いますよね。
ラインクリーニングはラインの「劣化予防」や「滑りの良さ」の為に施すと思っていませんか?
多くのラインクリーナーはシリコン薬剤で、撥水効果があり、水面からラインを浮かせます。
すると?水の抵抗が低くなり、ピックアップする時に「軽く」感じるはずです。
つまり、少ない力で、ライン全体(リーダー、ティペット、フックまで)力がかかるのですよ。
「あわせ」の瞬間も同様で、良く手入れのしてあるラインなら、フッキング率も上がります。
「どうもサカナがのらない・・?」と思ったら、ちょっと休憩してラインクリーニングをしてみて下さい。
まあ、オマジナイみたいなもんですがね・・。オマジナイついでにフェルールの緩みも治しておきましょう。
これだけで釣れるようになったら「メッケモン」でしょ?


第十三話  釣るためのキャスティング

ちょと出番が早かったかなー?
前話で「ラインクリーナーはフッキングアシストだ!」と言ってしまったので、フッキングついでにお喋りします。
「今日、初めてフライフィッシングの道具を見た!」という人にキャスティングを覚えてもらって、
20分以内に「一匹」サカナを釣ってもらう。「一匹釣れた!」ら、もう卒業!これが私のレッスンスタイルです。
よほど活性が低ければ、マーカーニンフィングをしてもらいますが、ドライフライでの釣りをお薦めします。
(釣る前にフライを1個作ってもらい、そのフライでサカナをかける!ものすごく楽しい!)

ドライの釣りに最低限、必要なキャスティングテクニックって何でしょう?
「10ヤード、真っ直ぐ投げるコントロール」と「フッキングの力の入れ具合」だけです。
10ヤードキャストは簡単に覚えてもらえます。(ほとんど10分以内!)
しかし、フッキングのチカラ・・は、なかなか伝えのくいテーマです。
(10匹バラセば11匹目にはフッキングしてるんですがね)
「フッキング」と「ピックアップ」は、大変似ている動作です。イメージしてもらうキーワードは、
「体育館の木の床にガムテープが貼ってあると思って、端からそれを剥がす感じですよ」
「小学生くらいの時の教室を思い出して。名前を呼ばれたら、元気に手を上げるでしょ」
といった感じです。何だか昔にやった事がありそうな・・・。

子供扱いをされている様に感じるでしょうが、フライフィッシング自体、そんなに難しい行為ではありません。
「砲丸投げ」や「棒高跳び」を習得して、世界記録に挑戦するというよりも、
「一輪車に乗れた!」とか「逆上がりが出来た!」に近い楽しみだと思います。
「自分の思い通りのやり方でサカナとコンタクトできた!」これがフライの真髄だと思います。
そうしたら、もう、フライフィッシングから抜け出る事は出来ません。
日常生活での動作を流用して、安定した「自分流」の動作にする事をお薦めします。
今後、キャスティングのエッセンスも取り上げていきます。


第十四話 人間様の都合

「一匹のサカナを発見しました!」悠然と定位して、時折なにかを食べるしぐさをしています。
まだ、こちらの存在に気がついていないようです。さて、ここでアナタは幾つかの選択をしなければなりません。
「何を食べているのだろう?」「昆虫を特定する手がかりはないかな?」「この位置から投げられるか?」
「フライは何にしようか?」「ティペットはもっと細いのにしようか?」「何処に落とせばキレイなドリフトが・・・」
などでしょうか。息も殺して、気分はスナイパーになっていますね。
「ヨシッ!これで行こう」と落としたフライはサカナの頭上を通過しました・・?あれ??
フライを変えても、変化なし!です。
「まあ、いいや。アイツはやる気が無いんだな・・」と自分を納得させ、次のポイントに行きました。
すると、さっきと同じ様な状況にサカナを見つけました。さあ、どうしましょう?
「うーん。コイツもやる気ないのかも?とりあえず付いているフライで一回だけ流そうかな?」
サカナはフライを見つけ、一瞬迷ったかに見えましたが、しっかりと浮上し、咥えてくれました。

ケースバイケースと言えば、それまでですが、ケースを認め過ぎると自分のセオリーには反映されていきませんね。
問題は、あまりにも「サカナのご機嫌」を伺うばかりに、「自分が優位に立つ方法」を犠牲にしてしまう事と、
比較すべき基準を見失ってしまうと、ただ「釣れた」「釣れなかった」という結果だけになってしまうという事です。

とりあえず、「見やすくて、釣れる自信のあるフライを付けて、チョット手前から、様子を見ようかな・・・」。
というのが、私のセオリー=ご都合主義でしょうか?


第十五話 セルフグルーミング

タイイングの話はいつになったら出てくるのでしょう?まあ、こういう話も楽しく遊ぶ為のテクニックということで・・。
子を持つ親となって、中年になって、なかなか腹の底から笑える様な楽しい思いが出来なくなって、
日々淡々と過すのが良い事なのだと言い聞かせる自分が居る事に気づいたりする。
子供の頃は毎日があんなに楽しかったのに・・・。

子供と大人の違いは何でしょうか? 保護者が居るか居ないか、だと思います。
叱られ、褒められ、慰められ。束縛も有りますが、最後の最後でピンチを救ってくれたのは、やっぱり親だったのでしょう。
簡単に言うと、頭を撫でてくれる人がいないので、ミスが許されない状態にいるのが「大人」の現状でしょう。
日々どれだけギリギリの決断をしている事か、数えてみて下さい。
「癒し系」とか「癒しグッズ」とか、言葉が横行していますが、
まー、それを媒体として自分で自分を癒すのだという事は皆さん気がついているでしょうが、
もっと必要なのは、その為の時間をどう作るか?自分の為だけの時間や空間を持つという習慣を持てるか?
(ややもすると、家庭サービスや付き合いの飲み会で、人と接する事も癒しと考えてしまう)

自分で自分の頭を撫でてあげる事。けっして役にたたない事じゃ無いと思います。
フライフィッシングはセルフグルーミングにうってつけの遊びじゃありませんか?


第十六話 実績のあるフライは、どんどんオーラが出てきます

「お気に入り」フライや「取っておきの」フライって、皆さん1つや2つ思い浮かびますよね。
例えば、それを「エルクヘアカディス」だとしましょう。
最初は友人から貰ったり、ショップで買った完成フライだったのかもしれません。
サイズは#12くらいで、カラーはブリーチ。その日は残念ながら、一匹も釣れませんでした。
ちょっと考えたアナタは、#14、#16サイズのものや、ブリーチ以外のカラーも手に入れて、リベンジです。
同じエルクヘアカディスでも「あー、これは見え難いな」「これは、本物っぽいんじゃない?」などと、
釣りをしているような、実験をしているような・・。すると!フライの傍でライズが!
あわててラインを引っぱると、もう一度サカナが出てフライを食べました!!
もう頭のなかは「真っ白」で、どうやって獲り込んだのかも覚えていません。どうにか流れにサカナを放し、ほっとしました。
しかし、記念すべき一匹に違いはありません。フライをみると、それは「#14、ブリーチのエルクカディス」でした。
「どうやって釣ったんだっけ?」などと思いつつフライを見ていると、なんとも頼もしく見え、次も釣れそうな気がしてきました。

これは、私の例で、まったくの実話です。
サカナの気まぐれによる偶然でも、フライに実績が付くと、「信頼」や「安心感」が生まれ、
その「信頼」は、次のサカナを釣るための大きな「自信」になるようです。
やがて、フライタイイングをするようになり、パターンとしての「エルクヘアカディス」は、
自分の使い易い「エルクヘアカディス」に形を変え、自分の釣り易いドリフト法になって進化し続けていくのでしょう。


第十七話 ハイフロートとハーフシンク

エルクヘアカディスの話が出たので、ドライフライの浮き方(流下姿勢)について・・。
頭の中にエルクヘアカディスとコーチマン(スタンダード)を浮かべて下さい。両方ともポッカリと水面に浮いていますか?
実は、「これが間違いの元!」でして、
ゲイブのあるフックはおしりが重く、スタンダードフライのハックルではテールは浮きません。
ボディは水中に、ハックルとウイングは水面上にあり、イマ−ジャー、クリップル状態の流下となります。
言い換えると、「ほとんどのドライフライはハーフシンクフライ」です。
CDCダンもパラシュートフライも、多くのスタンダードフライもハーフシンクフライになってしまいます。
そう割り切って使い方や視点を変えると、結果も変るかもしれません。
「使い方」としては、ボディが沈むことを積極的に認め、ダンよりもニンフ、イマ−ジャー的に使うという事。
「視点」は、この場合「支点」と言え、ハックルやポストの位置をどれだけ中心にし、重心をとれるか?
さらに言えば、ゲイブ部分にハックルがなければ、思い通りの浮き方はしないと思っています。

反面、しっかりと足だけで浮くアダルトを模倣するには、
シャンク全体にボディハックルを施したエルクヘアカディス、バイビジブル、グリフィスナットなど、
ハッキリと昆虫を模倣せず、フックを浮かすことのみ優先したパターンだけになります。
この場合、エルクヘアカディスはカディスアダルトの模倣にあらず、
足だけで浮いている状態の、あらゆる昆虫の模倣になります。
(こんなこと言い切っちゃって、良いのかなー?)


第十八話 理想の川

またまた、釣りとは関係のなさそうな理念系のお話なのですが・・。
−スタンス−
アメリカで大統領選や予備選が近くなるとニュース番組に企業のトップがコメンテイターで登場します。
ご存知の通り、米国は二大政党制?で、民主党か共和党かどちらかを支持するわけですが、
選挙ウィ−クにはGMの社長もフォ−ドの社長も、あのビル・ゲイツも支持政党のネクタイを締めて番組出演をします。
ふだん$1000もするネクタイを身につけているのに、この時は好んで$30のノベルティ−タイを締めます。
−オープン・ドア−・スピリッツ−
「ドア−」は物理的にも壁ですが、心理的な壁でもあると思います。
病院は「ホスピタル」、旅館はホテル、サービスの量や質を測る尺度として「ホスピタリティ−」などと言いますね。
ホテルも病院も24時間玄関は開きっ放しですよね。基本的に人を選んだり、拒んだりしてはいけないという、精神が感じとれます。
オープン・ドア−・スピリッツからは「困ったらいらっしゃい。元気になったら出ていけばいい」
「ただし、居るあいだは、最善の対応をしてあげる」と、言っているようにも感じとれます。
日本の「一期一会」に通ずるものなのでしょうか、大好きな考え方で実践もしています。

フライフィッシングに限らず「形から入る遊び」ってあるじゃないですか。
だったら「大事な遊びは形で表す」ってのはどうですかね?判り易い人間には判り易い人達が集まります。
つまり、自分の立場、考え、主義主張を他人に見える形で露出しておくと、
あとは相手が評価をするだけなのでなんとも気持ちが楽になります。
「私の特技は誰とでも話が合わせられる事です」なんて事言う人が時々いますが、
「おやめなさい。疲れるだけですよ」と進言したいですね。

私が思い描く良い川は、実はつり人の為にはならないかもしれません。
子供たちが飛び込む淵と大岩が有って、メンパとヤスで唇が紫になるまで
魚を追い掛け回し、つり人はそれを見ながら「しょうがねえなー」と苦笑するしかない。
そんな川辺の風景を頭の中で描いています。


第十九話 クラフト嗜好

フライフィッシングが、何故面白いのか?
愚問でしょうが、改めて考えますと、人がやらなければならない行為が多い、釣るまでのプロセスが面白い、
疑似餌を使うのでゲーム性が良い。などがあると思いますが、それらさえ「クラフト嗜好」が高い、
という括りで言い表せるんじゃないでしょうか。
ほとんどの物がアナログで、無駄が多く、そしてなんともいとおしい遊びです。
フライフィッシングそのものが、「ハンドクラフトな世界」なんじゃないでしょうか?
「フライを巻く」ことも勿論手作業ですし、あの太いラインを重りとして操るのだし、
リールにいたっては、ただの「糸巻き」ですから・・。

ハンドクラフト製品の「華」はバンブーロッドです。私も大好きで、
クラフト展などに参加するごとに、「良いアクションの竿は有るかな?」と物色しています。
わたしのフライなんかは「脇役」なのですが、これも自分で作れるクラフト物じゃないですかね?
ロッドはなかなか作れませんが、フライとか、ランディングネットやフィッシングアートなんかは、
上手下手は関係なく、トライすることをお薦めします。もっとフライがいとおしくなりますヨ。


第二十話 エクステンドボディ

オリジナルの「アンブレラフック」のおかげで、エクステンドスタイルでフライを作る事が多く、
エクステンドボディの利点や弱点が、いろいろと判ってきました。参考にして頂ければ幸いです。
まず弱点。エクステンドボディの部分の材料は、かなり限定されます。
使える基準は、「弾かない柔かさと、壊れない丈夫さ」です。
ね?これだけでも、かなり難しい選択になるでしょ?
そして、沈めるフライでは、エクステンドスタイルは、「あたりまえ」なので、
(マラブーフライの長ーいテールは、十分にエクステンドボディの理論を採用しています)
ドライフライで、「どう採用するか?」がテーマになります。
それでは、利点はどうでしょう?
1つは、「重いフックが中心にくる」ので、バランスが良くなり、浮力が増します。
2つ目は、「フックサイズを無視」してタイイングできるので、「大きなフックに小さく巻く」ことも、OK!
「小さなフックに大きく巻く」ことで、フックを目立たなくさせる事もOK!です。
あっ!弱点がもう1つありました。どうしても立体的な造形になるので、使い易いフライボックスが、なかなか有りません・・。

フックサイズに捕われないフリースタイルのタイイング。
パターンの模倣をせず、昆虫の生命感を模倣するタイイング(こちらもフリースタイルです)。試してみませんか?


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