THE ESSENCE OF FLY TYING



第二十一話 表と裏

「表と裏」なんていうと、嫌な言葉のようですが、ご心配なく。フライの話です。
一つのメイフライを作るとして、ボディの色を決める時、何を参考にしましょうか?
川で見つけた本物の「○○カゲロウ」を観察するか、雑誌に載っていた拡大写真でしょうか?
例えば「フタスジモンカゲロウ」を作ろうとし、各パーツのカラーを選ぶとしましょう。
(別けるのは、ウイング、ボディ、ソラックス、レッグくらいかな?)
ウイングは透明感があるけど、基本的にはレモンイエローくらいでしょうか?
ソラックスはオレンジや明るいブラウンの入ったイエローにしましょうか。
レッグは部分的にはイエローもありますが、全体的にはブラウンっぽいイメージです。
さて、ボディは? 
写真や本物を見ても、きれいなイエローのボディに見えますが、
真下。お腹の方から見ると、白に近い薄いイエローに見えます。
サカナの視点からは、「フタスジ=白っぽいお腹」と言えるのではないでしょうか?
同じく「ヒゲナガカワトビケラ」のお腹は鮮やかなオレンジです。レッグもオレンジ色が強いブラウンです。

「裏と表」
人間の視点から見たフライのカラーの選択と、水面下から見るサカナのカラーの認識は、
本当はかなり差があるような気がします。
と、言っても、ボディの上下でカラーを変えて作るのは至難の業なんですがね・・・。


第二十二話 Switch

サカナのスイッチって、突然入りますよね。
川だったら、まったく気配が無かったのにイブニングタイムに突入すると、「何処にこんなに居たの?」と思ったり。
ポンドでも、風が止んだりするとライズがパタパタと始まったりします。そして、一日に何度も状況が変ります。
理由は様々で、暖かな朝は、前の晩にハッチが多かったのか、サカナも満腹のようで、落ち着いてしまいます。
日中、風が吹くと、一旦ライズが止まりますが、ポンドの外から食べ物(昆虫、種子)が舞い込んでくると、スイッチオン!
風の止んだ午後には、ミッジのハッチが始まり、偏食スイッチがオン!(これを見間違えると苦労する・・)
ちょっと中だるみがあって、4時頃からはイブニングタイムで面白い釣りになる。という感じですね。

ライズも一日中安定する訳がないから、その時々にフライを選択する必要があるんですね。
本当に突然にスイッチが入る時もあれば、その予兆を感じる時もあります。
ちょっとした変化や反応を見逃さず、サイズや流下姿勢の違うフライに変えることで、
「サカナに振り回されず」に「サカナを上手く騙す」ことが出来るようになります。

ポンドだからといって、ワンパターンでなく、「自分流に組み立てる」と飽きずに楽しめますよ。


第二十三話 上を向いて歩こう(泳ごう)

サカナが「上から落ちてくる物に反応する」という事は、以前お話しましたが、
今日は「サカナの目」について、チョット考察を・・。
サカナの目は「魚眼レンズ」というくらいだから、
広角に捕らえて、イビツに見えて、焦点は中心にしか合わない。ハズですよね。
(でも、本当に小さなミッジも見ているんだよなー?遠くからスッ飛んで、喰いにくるしー?)
また、体の構造から、目は上部に付いているし、アゴの形も水底のものを食べ易く出来てはいない。
やっぱり、常に水平か上を向いて、水中か水面のものを見ているような気がします。
後、レンズでいうところの「露出」は、夜でも見えている必要が有ると思うので、ルクスは抑えてあるはず。
日中、陽が高くなると、サカナが沈んでしまうのは、眩し過ぎるからじゃないでしょうかね?
だって、アイツら「マブタ」も無いんですよ?


第二十四話 ロッドは振るものではありません

最近また「フライを始めたい」という方が多くなりました。喜ばしいかぎりです。(春ですねー)
レッスン料を頂くわけでは無いので、つきっきりで覚えてもらう様な事はしません。
スポーツトレーニングは「物理学」と「心理学」を基礎にして、「本人が解決方法を見い出す」行為です。
キャスティングも例外で無く、ベッタリとひっついたり、まして体に触れて覚えてもらうなど、「百害あって一利なし!」
「物理学」としては、「ロッドを曲げて、その反発力で、ラインを飛ばすんですよ」と言い、
「心理学」としては、「大丈夫、大丈夫!そんなに難しい事をやってもらう訳じゃ無いから」と、お伝えしています。
一匹釣れれば、全て理解してもらえます。(サカナの方が、よっぽど優秀な先生です!)
キャスティングに頭がいっぱいだと、サカナ釣りになりません。
「えーと、これがクラッチで、これがブレーキで、これが、・・・」の様な状態だと、ドライブにならないのと一緒です。
覚えてもらう側として、一番難しいのが、「ロッドは振る物で無く、曲げる物ですよ」というポイントです。

そして、エキスパート諸氏の優雅なキャスティングを見てしまうと、「全然、チカラを入れないんだ!」と思うのは大間違い!
初めの頃は「けっこうなチカラが必要だ!」と思って下さい。


第二十五話 唯一の接点

サカナを掛る道具は、ロッドでもラインでもありません。
勿論、システムとして、リールやリーダー、ティペットまで含めて、道具立てをしますが、
唯一、サカナと接点を持つのは、アナタの巻いたフライであり、フックです。
小さくて、誰でも作れて、「ちょうだい」と言われたら「はい、あげるね」と言われてしまう消耗品ですが、
「サカナを釣りたい!」という願望を詰め込んだ、アナタの意思のカタマリのはずです。

「フライを巻いている時間が無くてさー、解禁だってのにボックスがカスカスだよ」などと言う会話も耳にします。
エッ?それって変でしょ?「老人の病気自慢」じゃ無いんですョ!
機関銃は新調したけど、弾を持って来るの忘れた?ってこと??それじゃ、戦えないでしょ?
時間を作るのは、なかなか難しいでしょうが、もし、フライフィッシングをトータルで楽しむならば、
やっぱり「自分のフライは自分で巻きましょう」ね。
慣れてしまえば、さほど難しくは無いフライタイイングですが、偶に巻くんじゃ、バランスが狂うこともありますよ。
「趣味の遊び」が面倒になったり、億劫になったら、もう終わりですよ・・。
ガンバッテ「定番」フライや「新作」フライを作りましょうね。


第二十六話 小枝を食うなよ!

サカナは目が良さそうだ、というお話はしましたが、「流れてくる,物を間違えて食べた」ところを何度も見たことがあります。
ハッパ、花びら、タバコのフィルター、発泡インジケーター、そして表題の小枝などです。
すぐに吐き出すのですが、「もしフックが付いていたら?」ストライク!ですよね。
ここで、考えられる事は二つあります。
一つは「その流下物が、昆虫に間違えるほどの共通点があるか?」という点で、
「シルエット」や「流下の姿勢」を中心にフライパターンと照らし合わせてみましょう。
二つ目は「流下物のドリフトの速度や動き方に生命感が有るか?」という点です。
ティペットが付いていないので、ナチュラルに流れるのは勿論ですが、花や葉は「クルクル回る」とか、
発泡インジケーターなどは「ドンブラコと浮き沈む」。小枝などの長いシルエットのものは「シーソーのように上下動」。
という感じです。
この2点の相乗効果で、エサと間違えるのではないかと思うので、「理解して、積極的に活用」しませんか?

表題の「小枝」は、ストーンフライ、ブナ虫、ケースドカディス、テレストリアルなどのシルエットと考えられ、
その長いシルエットゆえ、「シーソーのように上下動」すると思ってレーンを流せば、
「何かと間違えた小枝の様に、間違えて?」アタックが有るのでは・・・?


第二十七話 オーバーデコレーションは禁物です

一つのパターンのフライを巻いても、「千差万別」「十人十色」ですね。
巻いていて感じの変る点はバランス、カラー、サイズなのですが、私的にはボリュームにも注目して頂きたい。
昆虫のシルエットは「丸いイメージ」では無く、「細長いイメージ」だと思っています。
パターンブックの写真を見てタイイングをすると、ボリュームが増して出来上がってしまいます。
照明が良いせいか、エッジ(細部)まで浮き上がり、それを再現しようとしてマテリアルが大目になってしまうようです。
たしかにボリュームが特徴で、大きく、太めに作るパターンもありますが、
少なくとも「メイフライ」「カディス」「ストーン」は華奢で細長いシルエットを持っています。
巻くときの意識として、「貧相」で、「ケチ」なくらいマテリアルを少量にし、
できればパーツを「省略」するくらいのタイイングをお薦めします。

ブッシーなフライはサカナに好まれないようです。オーバーデコレーションは禁物です


第二十八話 フックのフッキング?

いやいや、「フッキングの良いフック」と言うべきでしょうか?
アンブレラフックを初めて見た方の多くは、「こんな形じゃ、フッキング悪いでしょ?」と心配されます。
「生みの親」としては、少しは擁護しなければなりません。
フックメーカーの方に会う機会があり、率直に質問してみました。「フッキングの要素って何ですか?」
「要素は2つだけです!」と答えられました。
1つは、フックポイントの進入角度。(絵が載せられないので、どこまで説明できるかどうか・・・)
ストライク時の力は、ティペット、アイ、フックポイントをつないだ一直線上に作用しますね?
定規にフックのアイとポイントを接する様に置いてみて下さい。
定規に添うようにポイントの角度が小さければ、フッキングは良くなります。(ネッ、分かり易いでしょ)
2つ目はアイからポイントまでの距離(間隔)が有るか無いか、です。
同じシェイプのフックなら、大きいサイズの方がフッキングしやすく、
ストレートシャンクの方が、間隔の狭いカーブドシャンクのものより、フッキングしやすいのだそうです。

つまり、「ポイントの進入角度が狭く、アイからポイントまでの間隔がある程度あれば」
途中はどんな形をしたフックでも、フッキングに変りは無いのです!さあ!定規を用意して!


第二十九話 サカナの協力がないと釣りは成立しない

「フィッシュ&ゲーム」という言葉があります。フィッシュはもちろんフィッシング。
ゲームはハンティングのことを指します。日本じゃ狩猟は一般的とはいえませんが、彼の地では釣りと同等なんでしょうか?
ライズを捜しながら、釣り上がりをしていると、なんだか「ハンティング」をしている様な気がしますが、
やっぱり根本的に銃を使ったハンティングとは違いますよね。(あたりまえか・・)
私が思うに決定的な違いは、銃によるハンティングが「死」を伴うという点ではなく、
釣りは、サカナが積極的にフックやフライという「罠」にかかるのに対し、
銃によるものは、「まったく気が付かない内に」あるいは「逃げているのに」勝敗が決してしまうという点です。

「狩猟」と「狩漁」。
どちらも相手にとっては迷惑なことなのでしょうが、釣りの方が、やっぱり平和を愛する日本人向きでしょうね。
「圧倒的に人間に有利な試合」という訳でもなく、サカナがかかったら「一対一の綱引き」ですよ。
逃げられて悔しい時もありますが、「とても繊細な知的な遊び」と言えるんじゃないでしょうか。

だから皆さん。サカナが快く協力してくれる様、努力を怠らないようにしましょうね。


第三十話 射程距離

小渓流だとキャスティングも流し方も無理をしなければならない場面が多いですよね。
そんな無理を通すためには、お使いのロッドの特性を掴む事をお薦めしておきます。
フッキングさせるには、多くの要素がありますが、「ロッドの射程距離」を知っておく事も大事な要素です。
多くのロッドは「投げられる距離」と「釣れる距離」が違うことがあります。
一般的にも、硬いロッドは近距離に弱く、軟らかいロッドは遠くではフッキングしにくいものです。
「あらゆる状況でも、全てテクニックでカバー出来る!」などと思わず、
ご自分が「一番得意な距離」や「確実な距離」を日頃からつかんでおきましょう。
もし、それが10mだとしましょう。(いつもどおりのシュミレーションですよ)
対岸には丁度良い距離ですねー。次のポイントは以外に近いこちら岸でした。さあ、どうしましょう?
わたしなら自分の位置を変えて(下がって)、10mの距離をキープできるポジションから投げますね。
無理をして、水面を叩いたりしたら、それこそ「全て水の泡」になってしまいますからね。


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