THE ESSENCE OF FLY TYING



第四十一話 最大公約数的フライ

「最大公約数的フライ」なんか有りません!
ついでに「必殺のフライ」も「究極のフライ」もゼッタイに有りません。
ただ、以前お話したように、「実績のあるフライ」や「食べ易いフライ」と思ったフライを
自分なりに「整理し」「組み立てる」ことで、フライの選択を簡便にすることは可能です。
また、「昆虫のシルエットの特徴」や「流下姿勢も特徴」の本質をつかみ、「記号化」することで、
複数のシュチェイションをカバーする使い方をすることは可能だと思います。
「記号化」の分かり易い例は、ボディハックルで水面を点で浮く「エルクヘアカディス」です。
(毎回、例としてエルクヘアカディスを出しますが、だって、好きなんだもん・・・)

私はカディスが水面に浮いているところを見たことが有りません。(アナタはありますか?)
試しに浮かべてみたら、「とても低い姿勢で浮く」ので、エルクヘアカディスとは似ても似つかないものでした。
エルクヘアカディスの浮き方はむしろ「メイフライ」のもので、カディスの模倣とは思っていません。
つまり、「エルクヘアカディスパターン」は、その特徴であるボディハックルで、
「水面に足だけで浮く」全ての昆虫を模倣するために「記号化」したフライで、
複数の状況をカバー出来る、「最大公約数的フライ」!と言えませんか?


第四十二話 趣味と暇つぶし

先日テレビで、「趣味を持つことは良いことです」などと言っていたので、最後まで番組を見てしまいました。
仕事以外に社会と関わりを持つのに効果的だそうで、どうやら中高年のリタイヤ後の話のようです。
イギリスでは「趣味」にも厳格な定義があるそうで、
@ 趣味で収入を得てはならない。A一流にならなければならない。のだそうです。
この定義にあてはまらなければ、パスタイム(暇つぶし)になるそうです。
なるほど。「趣味は読書です」は成りたたないのですね。私も同感です。

アナタにとってのフライフィッシングは「趣味」と「暇つぶし」のどちらでしょうか?
@ は大多数の方に当てはまりますね。(ワタシはこの時点で趣味と言えなくなりました)
A の「一流」は若干の疑問が残ります。
イギリスはどうか判りませんが、日本ではフライフィッシングの腕前を認定する機関も方法もありません。
イギリスは「Sir=準男爵」の称号を与えることで一流の証のなるでしょう。日本なら「国民栄誉賞」?
(それにしても、「サー」は多発すぎてませんか?ビートルズとかF-1レーサーとか、単なる高額納税者?)
他人に認められるという点では、「家元制」などの方が、日本では馴染みがあるかもしれませんね。
「教えを乞う人がいる」「弟子と呼べる人がいる」「独自のスタイルを持つ」「伝統を残す」とかでしょうか。
それなら出来そうですね。とりあえずドンドン「弟子」を作りましょう。

それにしても、「経験」や「年齢」がものを言う世界なので、「若造」にはやりにくい世界です。
柔道なら「実力があるのは三段まで、五段以上は指導のための名誉職」なんですがね・・・。


第四十三話 2ピースのバンブーロッドと3ピースのグラファイトロッド

何やら分かり難い話になりそうです。どこまで説明できるやら・・・。

結論から言うと、2ピースのバンブーロッドと3ピースのグラファイトロッドなら、
どうにか同じアクション(ここでは感覚ということにしましょう)の竿が出来上がる。ということです。
どちらの素材で竿を作っても、フェルールの前後に曲がらない(硬い)部分が残りますよね。
フライロッドの場合、収納の為だけに多ピース化している訳では無く、
モーメントを生み出すキッカケになるのが「フェルールの役目」であると思います。
(実際、ワンピースのロッドも、アクションを出すには、それなりに難しいようです。)
(フェルールの有無を有効に使う、ワン&ハーフという理論もありますよね。)
「フェルールの前後に曲がらない(硬い)部分」が有るということは、
「どこかに、良く曲がる部分」が有ることになります。それぞれドコになるでしょう?

2Pバンブーなら、ティップに自重があるので、フェルール後のバットとティップ中央。
2Pグラファイトなら、グリップ直前と、ティップの任意の部分。
3Pバンブーは、各フェルールの後ろ側の2箇所。
3Pグラファイトは、かなり設計に自由度がありますが、基本的にはミドルセクション後半部分。
さらに、3Pグラファイトは、各セクションに弾性に違うコンポジット素材を選べるので、
バンブーのような、自重を必要としないパラボリックアクションも再現できます。
3Pバンブーロッドは、各ビルダーさん達、相当悩んで作っているようです。特にミドルセクションは、
「今までの常識をひっくり返される」ようなテーパーデザインにしなければならないそうです。

まとめると、グラファイトの竿って、3ピースロッドが出てきてから、
面白いアクションのものが増えたと思いませんか?(バンブーチックな?)
そして今後、3ピースのバンブーロッドの成熟が進み、どんな竿が出てくるか楽しみです。


第四十四話 釣りは逆算?

釣りに限らず、仕事も生活全般も「結果」を逆算することが多いと思うんです。
計算ばかりで無く、「偶然」だとか「サプライズ!」なんてのも楽しいんでしょが、
ワタシはどちらかと言うと、逆算して予定や準備をして、結果を得ることが多いし、好きですね。
(それで良いのかどうか、自分自身に疑問も残りますが・・?)
サカナ釣りの「結果」は、やはり「サカナをかける事」に限定しておきましょう。
その「準備」として、物理的なプロセスと、心理的な達成感を得るためのシュミレーションがあると思います。
「物理的=戦術」と「心理的=戦略」と言い直しても良いと思いますが、
物理的戦術としては、釣行場所、釣行時期の選定から始まり、道具だて、フライの用意など事前に出来る事。
心理的戦略は、現場に着いてからの状況把握、道具だての修正(ライン、ティペットなど)、フライの選択。
もっと限定して、1つのポイントについても逆算する事が多いです。
「あそこでサカナが出るだろうから」「その1メートル上流にフライを落として、ナチュラルに流そう」
「そのためには、あそこのスジにラインを乗せるのだから」「スラックの量はこのくらいだな」
「サカナを脅かさずに、キャスティングするには、この位置からなら出来そうだ」とかね。

文章にすると、計算ばっかりでツマラナイ話ですが、推測したことが結果に結びつくと、
達成感と共に「自分流のセオリー」の蓄積になるはずです。
「釣れなかった理由」を捜すより、「釣れた理由」を発見する方が、よっぽど建設的で大事だと思うんですが、
どうでしょう?


第四十五話 「機能で選ぶマテリアル」と「色で選ぶマテリアル」

ヘア材はカディスフライに限らず多用するマテリアルですが、代表的な「エルク」と「ディア」の使い分けについて。
一般的にエルクはフレアーし難いのでウイングに使い、ディアはフレアーするからクリップする時に使う。

などと言うのは昔の話!
近頃はインポーターさんも努力をしていて、北米からフレッシュな物が入ってきている感じがします。
獲れた季節や、部位、年齢で細かく分けてネーミングをしたりもしますが、ハイグレードなエルクと、
同じくハイグレードな「ホワイトテール・ディア」は、全く同じようにタイイングでき、
仕上がりも効果もなんら差がありません。違いは色で選ぶときの発色の差だけだと思います。
先端まで、きれいな色でフライを作りたいと思うときは、エルクを使いましょう。
「エッジのきいた」カディスウイングやヘアウイングダンが、シャープに作れます。
ブリーチが多用されますが、ナチュラル(中でもゴールデンナチュラル)は「ウルマー」のウイングにピッタリ!
ディアは先端に特徴的な「ゴマ模様」が入っているので、「完璧なブリーチ」や「単色のダイド」はありません。
そんなディアヘアは多彩なダイドカラーで、カディスのカラーバリエーションを表現し易い素材です。
「ダークダン=シマトビケラ」「ライトブラウン=ヤマナカナガレ」「レッドブラウン=ニンギョウトビケラ」等。
カディスのウイングの模様まで再現している様に使えます。

選ぶときのキーワードは、「太くて、真っ直ぐ」です。


第四十六話 フライに飽きたらどうしましょう?

遊び方も年齢や家庭環境の変化、仕事の忙しさ等の理由で「熱の入れ方」も変ったりしますよね。
遊びに熱中する人は、子育てや仕事にも熱中するはずだから、均等に時間を割く事は出来ないはずです。
ご多分に漏れず、私も7,8年前かな?子供たちとカヤックや山歩きをする方が面白くなり、
「フライは暫らくお休みしようかな?」と思う時期がありました。
どこに行っても、どうにか一匹くらいは釣れるし、雑誌を見ても目新しい記事は無いし、道具も間に合っているし。
練習が好きでは無いし、仕事が忙しくて遠征も億劫だし。と、理由はいくらでも出てきます。
いわゆる「停滞期」とか「中だるみ」でしょうね。そんな時に知人が持っていたバンブーロッドを、
沢山振らせてもらった事が、「停滞期」を抜け出させてくれました。
(今おもえば、ヤング、FEトーマスなど、雑誌でしか見たことのない、銘竿ばかり十数本!)
アクションの違いに驚き、もっと知りたくなって、さっそく1本手に入れました。
ただでさえ「自分でやる事の多い」フライフィッシングなのに、竹竿を使うと、もっと体の一部になり、
「魚や釣りそのものとの一体感」を感じるようになって、それは今も続いています。

川の規模や、対象魚、同行者、季節などを考慮にいれ、「よしっ!この竿もって行こう!」などと考えたりします。
「サカナを釣りたい!」から「この竿でサカナをかけたいな」みたいな変化もあります。
そして、「バンブー&ドライ」が私のスタイルになり、「アンブレラフック」が生まれ、
今も飽きずにフライフィッシングが「一番大事な遊び」の座をキープしています。


第四十七話 インナーゲーム

何回も読み返す本が2冊あって、両方ともテニスがらみの本なのですが1冊は小説で「ウインブルドン」。
これは小説ながら、ゲーム中や再戦までの心理劇で、テニスを知っている人ならではの臨場感が楽しい。
もう1冊は表題の「インナーゲーム」。これは「右脳革命」などと同様の内容で、指導書と言って良いと思います。
かいつまんで言うと、「相手をリラックスさせ、こちらの言葉を理解させ、自分で何か発見するようにしくみなさい」
という内容で、その方法を繰り返し説く本でした。たしか、野球版やサッカー版も出ていたような・・。
私はどちらかというとビジネス書的に読み、「子育て」や「部下の育成」として活用していました。
最初は、非常にアメリカチックな合理的な操縦術ととらえていたのですが、このごろは別の解釈をしています。
とても東洋っぽい「禅の心得」とダブります。「緊張」「思い込み」「自信過小」などが、
物事の達成の妨げになり易い事です。「洋の東西」を問わず、同じ視点に辿り着くのですね。
釣りに限らず、仕事や生活全般でも、「リラックス」することによって「見えてくる」事が多いと思うこの頃です。

この本の終章には、
「相手の能力を引き上げ、自分の役に立つような人間にしましょう」というようなことが書いてあったような・・。
ヤッパリ、ドラスティックなアメリカっぽい内容だったのね?チャンッ、チャンッ!


第四十八話 ラインクリーナーとフロータント

以前ラインクリーニングは大切ですよ。とお話しましたが、最初からラインの手入れをしていれば、
どんなに安い(イヤイヤ、高価でない・・)ラインでも、良いコンディションを永くキープできます。
シルクラインは手入れをして、プラスチックラインは消耗品だから手入れはしなくてもいい。
と、言うのは大間違い! 「馴染んだラインを永く使う」ことは、とても大事なことだと思います。
ロッド、ライン、リーダーシステムがマッチしていると、キャスティングもし易いけど、フッキングも安定します。
ラインのテーパーデザインで、キャスティングも変るけど、そのラインの重さでフッキングさせるのだと思います。
ボトル1本¥1000位のもので、「安心」が得られるなら安いものじゃないですか。
3M,ウルフ、リオ、エアフロ、コートランドと、色々浮気をしてきましたが、近頃のマイブームは、
シュープリーム(もしくは、3M以外の名で出ているシュープリーム系のもの)に戻っています。
ちゃんとクリーニングしておけば、硬さもテーパーデザインも良いので、コントロール抜群です!
一方、フロータントは「ジェルタイプ」一筋です。
手が汚れるかもしれませんが、部分的に塗りたいし、なにより「浮いてくれー。仕事しろー。」と、
オマジナイのように塗りこむ作業が習慣化しています。(ついでにバーブを潰すのもオマジナイ・・)
新しいフライパターンを作るときも、ジェルで「普通に浮く」ことを基準にしています。

スターターキットを買って、フライを始めたばかりの人でも、必ずお奨めしています。
「フライが上手くなりたかったら、ラインクリーナーとフロータントにケチらないで下さいね」ってね。


第四十九話 日本流フライフィッシング?

ニュースで「EU憲章」批准の投票に、フランスとオランダが国民投票の結果、
「否決」となったと言っていました。
それぞれに独自の文化を持つヨーロッパの国々は、地域の統一を拒んだようです。
地続きで人種も入り混じり、侵略の歴史も多い欧州ですが、民族意識、宗教とともに、
文化も大事に継承する気持ちが働いたのではないでしょうか。

日本は、外来の文化を上手に消化して、柔軟な解釈をしてきた国だと思います。
テンカラって、日本の文化な様な気がするんですよね。
のべ竿に疑似餌をつけて、効率の良い「職業漁師」用の釣り方、と言って良いのでしょうか。
「機能」を突き詰めて「様式美」まで到達すると、「文化」になるんじゃないでしょうか。
(到達するには、長い時間がいりますがね)
フライフィッシングやバスフィッシングは、日本に紹介されて約50年になるそうですが、
文化になるには、まだまだ時間が必要なのでしょうか?
趣味趣向が優先されて、一向に構わないフライフィッシングですが、「基本」はすでに定着しているのに、
道具やメソッドは「発祥の地」の影響を色濃く受け続け、ジャパンスタイルはいつか確立するのでしょうか?
もしかしたら、世界のフライマンに「日本のフライマンはスゴイじゃないか!」と言わせたり、
「フライが上手くなりたかったら日本に行け!」と言われる時期がくるのでしょうか。
それとも、このまま「外来の」「与えられた」遊びの方が良いのでしょうか。
私自身、まったく結論を見い出せない議題なのですが、考え続けるべき議題とも思っています。


第五十話  コラムとエッセイ

先日、「フライの雑誌」を初めて買いました。
知り合いが記事を書いたというウワサを聞いたので、これは読んでみなくては。と思ったしだいです。
本を読むのは好きなのですが、(と、言うより、読まなきゃバカになるという恐怖感)
文章で、人に物事を伝えるのは、とても技術のいる作業だと思っています。
読み手の想像力の発揮のしかたも、同じくらい重要なのでしょうね。
シーンが浮かび、人物の表情や風景、天候、時間までも頭に浮かぶような文章に会うと、
興味は一気に増し、早く次のページを読みたくなります。(代表作:おもしろいサスペンス小説)
反対にイメージの湧かない文章は、頭に入りにくく、ページも進みませんね。(代表作:教科書?)
さいわい知人の文章は、読みやすくスリリングな展開で、大変たのしむことが出来ました。

一つの事象を伝えることが「文章」なのですが、内容のふくらみ(つまり、枝葉をつけること)により、
文体は変化しはじめます。チョット例えてみましょう。

記事: 2001年、アンブレラフックが出来ました。                          
レポート: アンダーハックルを用いたドライフライ専用フックはドラグ回避に有効です。          
コラム: 海外にも販売をしているようですが、どうやら「ドライ馬鹿」と呼ばれる人にしかウケナイようです。
ノンフィクション: 過去のフライパターンに、エクステンドスタイル、バーチカルフックも存在する。    
エッセイ: 思いつきで始めたフックメーカーですが、大勢の方のお会いでき、大きな収穫を得ました!(ウソ)
小説: そして、高橋はフックで儲けた金で「愛人」を囲うのだった・・。(ウソ、絶対ウソだからね!)   
こんな区分けになるのでしょうか?
私としては、気の張らない文体で、「フーン」とか「ヘー」とか言える、軽い感じの「コラム」が良いですね。
と、言うわけで、この"THE ESSENCE OF FLY TYING" のコーナーは、
「コラム」ということで、お楽しみ下さい・・・。


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