THE ESSENCE OF FLY TYING



第六十一話 名匠ジム・グリーン

昨年84歳でお亡くなりになったという記事は、雑誌でお読みになった方も多いはずです。
勿論お会いしたこともありませんし、恩恵を受けているという実感も無いのですが、改めて記事を読むと
優れたフライマンというだけでも無く、ただのアイデアマンでもない事が読み取れます。
ドナタデモ恩恵を受けている「功績」としては、ウェイトフォワードラインの発明と、各社ロッドデザイン。
デザインからのキャスティング理論。スリップオーバーフェルールの発明。(これだけでも、大変な人ですよね)
バンブーロッドからグラス、グラファイトと、ロッドの素材が変り行く、フライ黄金時代に遭遇し、
その中心で才能を発揮できたことは、ラッキーなのかもしれませんが、
グリーン氏が持ち合わせていた「本当の才能」とは、個別の発明ではないと思います。

固執せず、業界全体を牽引した「時代を読む力」 
偶然を否定しない「観察力」
好奇心や探究心から生まれた、止まることを知らない「考察力」
「ロッド」と「ライン」と「キャスティング」をトータルで考える、「クリエイティビテイ」
現代人に欠けている能力を全て書き記したような形容の数々が、氏の「本当の才能」と思われます。
氏を知る人物の証言は、
「否定のための否定をしない人」  「いつも、既存の枠組みに満足するな!と言っていた人」
「確立されたものに寄り添って安閑としているのに耐えられない人」と、一貫しています。

もし、「忘れられない人になる条件」があるとするならば、
「粋がったパフォーマンスなど無縁で、問題と真摯に向き合い、解決のためには「想い付き」も否定しない」
ジム・グリーン氏の足跡そのものになるのではないでしょうか。
物作りには、「破壊」と「構築」が欠かせないもので、「普遍」はやがて「陳腐」になる事を肝に銘じましょう。


第六十二話  HOLLY CANE

[ヒイラギの杖]ではなく、「聖なる竹竿」と表現したいのですが・・・。
来月「モダンバンブーロッドビルダー6人展」という題名で、バンブーロッドのイベントを行うのですが、
この事によって、バンブーロッドが「私にとって、ますます大切なもの」になり、
「竹竿で釣ることが大事な儀式の様なもの」になってきました。
準備の為にビルダーさん方と交渉したり、現在求められるアクションについて話し込んだり・・・。
お話をしたビルダーさんの竿たちは、1本1本に存在感と必然性を感じます(デザインもアクションも)。
美しい魚。狡猾な魚を釣り上げているストーリーさえ浮かんで見えます(ロマンチストでしょ?)

何故?竹竿が好きかというと、「振っても」「釣っても」手に伝わる情報量が多いと思うからです。
ゆったりとしたストロークでのキャストは、「修正」や「小技」を容易にし、フライをポイントに贈れます。
ワンテンポ遅れるフッキングは、むしろ魚の反転を予定していたかのようにフックに伝わります。
そして、狡猾な魚が逃げようとする心理まで伝えるロッドのランディングフィ−リングがハイライトでしょう。

決して「圧倒的な武器(釣りマシーン)」にならず、「素手の延長のような道具」になる竹竿は、
「人間がやる事の多いフライフィッシング」の象徴と思えます。
さあ!信頼できる「聖なる1本」を小脇に抱え、まだ見ぬ川に出かけましょう!


第六十三話  バリアフリーだとかユニバーサルデザインだとか

いやー、別のこと考えていたら、急に「老後のフライライフ」が気になっちゃいまして、
遊びは「根性」じゃなくて「要領」と心に決めているワタクシとしては、手立てを考えてしまいます。
今でも老眼鏡が無いとティペットが結べないし、今後の重大なテーマになりそうです!

サカナに優しいフック(バーブレス)や釣り場(C&R)があるし、ゴルフクラブやボールなんかは
「少ないチカラで、飛距離アップ!」なんてシルバーな道具が用意されていますよね。
釣り道具の未来(もう、あるのかも?あったら教えて下さい!)は、どうなるのでしょう?
50g以下の重さで、7'6"くらいで、まるっきりバンブータッチの新素材ロッドがでたら、迷わず買っちゃうのでしょうか?
結束不要のライン・リーダー・ティペット・フックアイのシステムは出来上がるのでしょうか?
私のフックやパターンなんかは「大きくても魚が出てくれるフライ」ってのがテーマなんですがね。
感覚が重視されるフライの世界で、ユニバーサルデザインというのは無縁なことじゃ無いと思うのですが、
それとも「こんなツマラナイ事を考えるようになったなら、スッパリ辞めちまえ!」ってことでしょうか?
マーケットの要望に応えるのがメーカーの使命。どなたか、お考え頂けないでしょうかね?


第六十四話  フッキングミスとバラシ (嫌なテーマだ・・)

ドライフライの釣りでは「フッキング」を語らない訳のはいきません。(とうとう来てしまった・・)
今回はちょっとネガティブに「ミス」の現象から解明したいと思います。
フッキングに関連する行為には「魚の捕食行為」「フッキングした場所」「貫通力」
「アワセのタイミング」「スラックの量の問題」「ロッドの特性」などが在ると思います。

一方「ミス」に関連する現象は、「食べていない」「すっぽ抜け」「貫通させていない」「弾かれる」で、
ランディング中の「バラシ」も同様に「身切れ」「弾かれた」「未貫通」「テンションを緩めた」等です。
さてさて、かなり複合する要因があり、どこから解決したら良いのか、その方が問題ですね。

ちょっと整理してみましょう。
@解決不可能な点:「魚のミス=食べ損ないやフッキングポイントを人が調整するのは至難の技」
A釣り人によって解決できる点:「主にラインコントロールによるテンションコントロールは可能」
B道具(ロッド)の選択:「これが精神衛生上、一番良い!が、ロッドの特性を把握する必要もある」

それでは、Bのロッドにスケープゴートになってもらいましょう。ロッドの素材に関わらず、
「軟らかいロッドは、貫通力は少ないが、弾かれ難いのでバラシが無い」
「硬いロッドは、貫通力は大きいが、魚のバイブレーションにより、ラインテンションが緩むことがある」

そうなると「理想のロッド」が見えてきそうですね。(使いこなす力量も問題になりそうですが・・・)
「貫通させるだけのパワーを有し、サカナの抵抗を吸収してしまうアクションの竿」ですか・・。
それを見つけるのが大仕事なんでしょ!?振って、振って、振り倒すしか無いんでしょうね。

今回はティペットの「合せ切れ」は論外として割愛させて頂きました。(次回やろうかな?)


第六十五話 M・I・J

「地産地消」という言葉をニュースなどで聞いたことはありませんか?
コストダウンの為に輸入に頼っていた政策の反動から生まれたような言葉で、
地元の製品を地元で購買しましょうと言う、内需促進を意味した用語なのでしょう。
反面、ブランド志向は食品にまで蔓延し、インターネットで世界中から「お取り寄せ」の
出来る環境では、虚しい掛け声のように感じてしまいます。
Jリーグよりもワールドカップ予選の方が面白く、プロ野球中継よりもメジャーリーグの
結果が気になる世の中で、「世界に通用するメイド・イン・ジャパン」を探してみませんか?

表題のM・I・Jは、勿論 メイド・イン・ジャパン を表しています。
日本の伝統だとか、日本ならでは、という意味では無く、「世界に誇れる日本製品」です。
「野球のイチロー」とか「卓球の愛ちゃん」を製品と言ってはいけないでしょうが、
ハンデキャップ無しで世界と渡り合っている姿は、胸がすく思いがし、誇りに感じます。

民族主義は要りません。高度経済成長もバブル景気再来もノーサンキュー。
だけど、世界に通用する個人・技術・アイデアはウェルカムです!
「自信を無くし」「手足が竦んで動けない」日本人(もちろん私も含む)に必要なのは、
この感触なのではないでしょうか。
勝ち組みとされているIT企業もマネーゲームメーカーも現状では「地産地消」に過ぎません。

意識を「世界基準」に切り替えれば、やる事はイッパイあるはずです。
もし「自分の選択に自信が無い」ならば、「ブランド志向」か「世界基準」に頼るしかありません。
あなたならどちらを選びますか?
宜しければ、「世界に通用するメイド・イン・ジャパン」を探してみませんか?


第六十六話 好きなモノに理由は要らない

別にフライの話じゃなくてもイイんですけどね。
例えば「阪神タイガースが好き」とか「山口百恵が好き(古すぎるか・・)」などで、
タイガースなら「弱いのにたまに優勝するからイイ」「わしらが居なけりゃ勝てへん!」
歌手なら「歌が上手い」「下積み時代があったから、ここまで来た!」とか言って、
あれやこれや「理由」を付けているようじゃ、本当に「好き」なことにならないと思うんですよ。
バックボーンやヒストリーの細部に注目していると、理由が無いと好きになれなくなってしまいます。
もっとも重要な「本質」「インプレッション」「自分との関わり」「自分にとっての必要性」
そんな角度から「好き」になれば、「飽きる」ことなど無縁じゃないでしょうか。

無理矢理フライに話を持っていくと、
アナタの好きな道具(ここではロッドにしましょうか)を目の前に置いてみて下さい。
そして、「何故?この竿が好きなのか?」理由を考えてみて下さい。
もし、大した理由が思いつかなかったら、その竿は「本当に好きな道具」なんじゃないですか?


第六十七話 景気回復の兆し?

2年ぶりに横浜で“フライフィッシングフェスタ”が開かれました。
私は、2002年、2003年と出展しましたが、今年もそれ以降も出展を予定していません。
なにせ“小物屋”ですから、経費倒れとネタ切れが主な理由です。
その代わり今年はデンバーのタックルディーラーショーに人づてですがフックの発表が出来ました。
年明けにもニュージャージーで行われるフェデレーションショーに発表出来そうです。(人づてで・・)

フライフィッシングフェスタに出展をしていた、仲の良いバンブービルダーに会場の状況を聞きました。
いわく「土曜日はスゴイ人手だったよ」「私の竿も何本かオーダーがあったし、本当に欲しい人が多い」
と、とても良い感触だったそうです。
ニュースを見ていても、株価や設備投資に好景感が見えます。新業態の企業の台頭が目立ちますがね。
この調子だと来春頃には個人消費も確実に上向くと思われます。
“無駄な買い物”をすることを奨励はしませんが、「ちぢこまった心理にノビを与える」ことは良い事で、
“明日への糧となる”余暇への投資にも期待ができ、
住宅着工数や家電売上はすでに結果が出始めているようです。
自分の商売に直結しないとしても、たいへん好材料と思っています。
構造不況でなければ、“不況”も決して悪いことばかりでは無く、「反省」や「変化」を生み、
「考え」て「良いものを選ぶ」期間になると思っています。(やせ我慢?ですね・・)
私のところでもバンブーロッドのオーダー数が多くなっているのは、
“チョッと良いものが欲しいな”という表れなのでしょう。


第六十八話 「釣り易くする」工夫と心得

また、大袈裟なお題になりましたが、もうじきシーズンインなので、これも良いでしょ?
フライフイッシングで魚を釣り上げるには、さまざまな要素が複雑に関連している。
と言うことは、皆さんお感じで、この項でも何度かお話してきた事です。
複雑さを解消するにも、さらに工夫(複雑化)する方と、シンプル(単純化)に捉える方が居ます。
私はもちろん「手抜き」「雑な性格」「シンプル」派ですが、手抜きもそれなりに良い事がありまして、
「これだけやったのに魚が出ないなら、今日の所はカンベンしてやるか」と、あきらめがつき、
現場で必要以上に悩むことをせず、帰り道が憂鬱にならなずに済みます。
では、実際に行っている工夫と心得を・・・。

@ フロータント、ラインクリーナー、ティペットなどの小物を忘れずに・・・。
竿やライン、リールを忘れる方は居ないでしょうが(実話=大勢いらっしゃいます)
小物を忘れる方はとても多いものです。特に古いティペットは後で泣きをみますので
事前に強度チェック、新品購入を考えておきましょう。

A いきなり川辺に近づかない。
今年初めての釣り場に着き、準備も済ませ意気揚揚と「サーッ、釣るゾー!」と言って
川にジャブジャブと立ち入ってはいませんか?水位・ハッチ状況・魚の居場所などチェックする事は多い筈ですよ。
なにより、岸近くの魚を奥に追いやっていませんか?

B 自信のある「大きくて」「見やすい」フライを結びましょう。
シーズン最初の魚はドライフライで釣りたい!と思うのは私だけでは無いはずです。
基本のキャスティングやラインコントロール、ドラグ回避法を思い出しましょう。
そして、まずは実績のある「見易いフライ」で魚のコンディションを観察しましょう。

C 気持ちや指先の神経を「集中」させます。
解禁当初はどこも寒さが残り、集中力を維持するには苦労しますが、
雑な性格の私でも「だいたいアノ辺に、こんな程度で投げればいいや・・」などとは思っていません。
魚の心理を推測し、「気持ちはフライや虫になりきり」「指先はフックポイントに直結します」
そして「フッキングは魚を素手で掴む気持ち」でいます。(本当ですよ)

そのための経験やトレーニングは、皆さん積んできている筈です。
それを実践するのが現場(自然なフィールド)なはずです。
一度イメージしてみて下さい。きっと良い結果になると思いますよ。


第六十九話 ストーンフライは大物キラー

春先の釣りというと、「難しい」「魚に無視される」「フッキングしない」というイメージですね。
ユスリカやほんとうに小さなコカゲロウを選ぶ方が多いと思います。
だけど、魚のアタックも俊敏だし、フックサイズのおかげでフッキングし難いし・・・。

解禁の釣り=ミッジに異議を申し上げます!
同じ条件下で大きなウェットフライやルアーに反応する魚もいますよね。
もちろん、水面下の話で、「ドライは別ものでしょ?」というご意見もあると思います。
本当に小さいフライにしか反応しないのでしょうか?
本当に小さな虫しかハッチしていないんでしょうか?
経験から言わせてもらうと、「答えは否!」です。
石裏を見るとハッチ間近の大きなカディスやストーンがうようよしています!
雪の積もった河原で2cm位のストーンのアダルトが這っているのも見ました。
何より、大物がゆっくりと浮上してストライクしたことがあります。(回数は少ないけど・・)
もちろん、もっと暖かな時期の方が有効ですが、
ストーン=大物キラーという方程式が私にはあります。


第七十話 虫らしいフライと虫らしくないフライ

このコラムのコーナーもとうとう70話まできましたね。(重複した題材も多いですが・・)
少数ですが楽しみになさっている方もおり、できればご意見を頂戴したいものです。

さて、お題のフライについてですが、メインは「クリップルダン」についてです。
私が思うに、「虫らしいフライ」の代表は「アント」なんですが、どう思われますか?
黒くて、胴がくびれた様子はどなたが作ってもどなたがご覧になっても「アントだね」と言われることでしょう。
たいへん性能が高く「こまった時のアント頼み」と思われる方も多いことでしょう。
反対に「虫らしくないフライ」の代表が「クリップルダン」だと思っています。
3,4年前から誌面に登場してきたと記憶していますが、最初に見たときには、
「何んなのコレ?」「不恰好なフローティングニンフ?」などとしか評価をせず、
作ってみる興味も沸きませんでした。

ほんとうに最近になっての事なのですが「半沈み」「イマ−ジャー」という流下形態が
とても有効なものに思えてきました。
アンブレラフックは水中のフック部分がシャックと思わせるイマ−ジャーで、
水中と水面上のフライを同時に表現しています。
コンパラダン、CDCダン、パラシュートフライ。さらにはスタンダードフライの多くも
ボディが水中に没した状態では「フローティングニンフ=羽化中の昆虫」を疑しています。

「フライの形状」と「フライの流下形態」には一致しない部分があり、
どう、作るか?よりも、どう、使うか?で、作ったフライがサカナに好まれるかが決まるようです。


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